印刷データ作製上のコツ その1



旭川印刷製本工業協同組合の機関誌「フレッシュ」には関連業者の皆さんから有料の広告原稿を頂戴しています。
札幌A社からもデータでいただいたのですが、あまりにも酷い状態なので連絡したところ今までクレームがついたことはないとか、面倒なら変えて良いとか、これが同業者かと思うほどの無知ぶりでした。
そこでこの場を借りて簡単ですが問題とした部分をいくつか紹介します。

こちらのマシンなど
こちらはG4マック(450Mhz*1)、OS9.2.2、メモリ896M、バックサイドL2キャッシュ1M、ハードディスクは合計60GBです。イラストレータは8.0、フォトショップは6.0を使っています。
ハード、ソフトともに通常の印刷・デザイン業務に何ら支障はありません。

問題点01・書類のデータ量1.3MB
支給されたものはフロッピーディスクでした。ちょっと前のマックにはFDは実装されていましたが現在でははずされています。とりあえずFDユニットを使って読み込みました。書類の情報を確認したところデータ量1.3MBと出ました。イラレの書類で、しかもわずかなスペースの広告原稿で1.3MBというのはちよっとヘン。実際、広告の大きさは左右14センチ以上ありました。こちらで小さくしろと言うのですか?


問題点02・イメージデータの処理
データの中にはイメージ(ラスターデータ)が配置されたままのEPS形式で保存されていました。しかも肝心のオリジナルデータはなし。配置された画像がRGBなのかCMYKなのか、解像度がいくつのデータなのかも不明。顔なじみならOKでも、そうでない場合はいやがられます。理由は簡単、トラブルの元だからですよ。まして小さくした時の保障なんて、このままではこちらではできません。

問題点03・中途半端なアミ指定
平網部分の網指定(パーセント)が下のように小数点以下のままです。

こういう場合はM20、Y40とすべきです。なぜならコンピュータ処理ですから理論的には19.61パーセントの網点も生成されますが、実際の印刷では表現できないのです。
つまり19.61パーセントの網点は20パーセントの網点に近似的にふらつき、人間の視覚や脳内での網膜残像処理でも19.61パーセントと19.62パーセントの差を認識できません。
つまりこの数字は現実的に無意味なものであり、こうした無意味な数字を平気で残してしまうのが無責任なのです。19.61パーセントの網指定をされても責任持って印刷する会社なんて、どこにもありませんよ。

ついでに言えば、最近の版権フリーの素材集ではこうした中途半端な指定のままのものがあります。私は全てチェックして10パーセントきざみの正数にしています。もしくはラスターデータに変換してイメージとして使用しています。
こんなことは自慢にもなりませんが、「最近のデータ集はみんな小数点以下2桁の指定だよ」なんてつまらない反論されるとウンザリするので先に書いた次第です。

問題点04・不要データの未処理

これは広告原稿をプレビューしたときの一部分です。この枠は印刷されません。この枠の存在自体が不可解で何のためにあるのか理解できません。想像するに文字の仮想ボディと行間にそって作られているので、そうした目的で作ったと思いますが、それならガイドを作成すればよいだけの話です。つまり実際のデータとしては不必要なものです。不必要なものを残してはいけません。イラストレータの機能の1つに「孤立点」の選択機能がありますが、このデータを作った人は何故こうした機能を実装しているのかさえ分からないのでしょうね。

問題点05・すごいグラデーション

データにはスミのグラデーションもありました。普通であればイラレのグラデーション機能で無段階のグラデを作ります。アナログで言えばエアブラシでグラデの原稿を作るようなものですね。しかしこのデータは、わざわざ分割しています。先のたとえで言えば、各段階ごとに平網を指定しているようなものです。なぜこんなことをするでしょうか。ここでは29.02パーセントの網指定となっていますが、その両隣の網も小数点以下の指定、全体が小数点以下です。最初からトーンジャンプしてくださいというデータですね。わざわざデータ重たくして、何がしたいんですか。

まだまだあるけど
こんな状態で作られた広告原稿。担当者は何の文句があるのかと言わんばかりの対応。6大都市札幌にして、この有様。北海道がいつまでたっても経済的に厳しいのは政治のせいだけではありません。逆に言えば、東京をはじめとする都市部では相応の技術を習得するために相応の努力をしているのです。たくさんの会社があるためルール化もされていますし、自分勝手なデータを持ち込んでも相手にされません。はっきり言って馬鹿にされます。それが嫌なら、どこの出力センターに持ち込んでもスムーズに進行できる、まともなデータを作ることです。たまに「中央がなんだ。北海道も東京も同じ時代だ」なんて乱暴な意見を聞きますが、こんなデータを平気で使っているようでは説得力はありません。

結局、この広告は使用されませんでした。無責任なデータを振り回したあげく、無責任な終わり方をした、無責任極まる、おはなしにならない話でした。