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印刷や製版の現場ではひんぱんにルーペを使いますから、高価なものよりも手頃な値段のものを多数揃えたほうが使い勝手が良い場合があります。そこらへんに置いてあるルーペを、サッと手にとってパパッと確認するという雰囲気です。あまり気を遣うことなく使えるルーペがピークルーペです。

落とすと怒られるモノ

何かのはずみで机から落としたりすると、ひどく怒られるモノがあります。それが鉛筆や消しゴムなら問題ないのですが、たとえば設計事務所でT型定規を落とすと怒られました。狂いが生じるからです。あるいはデザイン事務所でコンパスやディバイダーを落とすと顔色が変わったりします。針の部分が床にささって、ぐにゃっと曲がったりすると大変です。今はあまり見なくなった凸版原稿も落とし方によっては大問題になりました。カドの部分から落ちると、これもグニャッと曲がってしまい、使い物にならないからです。そんな時、キャリアのある先輩は「だいじょーぶ、だいじょーぶ」などと唱えながら木槌でたたいて直していたりしました。年寄りは大事にするもんだと実感しました。

当然、ルーペも落とすと怒られるモノの部類に入ると思うのですが、ピークルーペに関しては怒られることはありませんでした。どうして怒られないのでしょうか。

意外とあいまいな創り

ピークルーペは意外とあいまいな創りとなっています。レンズは恐らく上下に各1枚(接眼部分と対物部分)あると思われ、それらを収めた黒い胴体部分と焦点距離を固定した透明な採光部分で創られています。倍率も固定されているので可動部分はないのですが、ふるとカチャカチャ音がするものもあります。どうもレンズが接着されていないようで、それでいて不都合なく使えるところがミソだったりします。

にぎにぎ

それ以上に感心するのは、ちょうど握った時にすっぽりと手に収まる大きさであることです。握る必要はないけれど、うまい大きさを考えたものだと感心します。適当なあいまいさと堅牢さ、そして手頃な大きさが作業の現場では使い勝手の良さとなって定番の地位を築いています。

落としても壊れないし、気が付くほど狂わない。それどころかホコリやテープをくっつけられても平気で使える使い勝手の良さ。そんなところに落としても怒られない理由があるのかもしれません。

最後は人

もうずいぶん前に、歯科技工士の人が欧州の外車を購入しました。さっそく乗せてもらったのですが、ふと見るとスピードメーターがうごいていません。驚いて壊れてるよと告げたところ、ドライバーは指でメーターパネルを軽くたたきました。するとそれまで動いていなかったメーターが急に動き出し、ドライバーはこんなもんです、と顔色も変えずに言っておりました。

精密であるべき機械のもつあいまいさは、やっぱり最後は人を信じなきゃいけませんよと、そんな思想があるのではないかと思います。

道具とは職人の技術があって始めて完結するものなんだなと思います。

ピークルーペを3Dで作ってみました。