| 河合寛治郎の陶芸を観る機会があった。「美を追わない仕事/仕事の後から追ってくる美」と述べているが、中国・朝鮮の陶磁に自らの研究を重ねて独自の境地を開いて築き上げた作品は伊万里・備前・清水といった他の焼きものと違う味わいのものであった。柳宗悦、バーナード・リーチなどとともに日本の民芸(民衆的工芸とでも言うのであろうか)運動を興し、「用の美」を追求した人であるから、その人生観も独特のもので、一日それらの作品に目を奪われた。その会場で同じように見いっていた初対面の人と雑談する中で、その人は私の職業を尋ねたので、印刷業ですと答えると、「まさに用の美の世界ですね」と言ってきた。すぐには理解できなかったが暫くたって少しずつ解かりかけてきた。 |
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| 私たちの先達の文選・植字・手差し・解版・製本のすべてが庶民の職人技で、木版の時代からコンピュータの今日まで「用の美」の世界であるに違いない。 |
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| 旭川印刷製本工業協同組合はこの1月に創立50周年の行事を開催した。記念講演あり、祝賀会あり、今、記念誌の制作中であるが、式典の主な柱として創業50年以上事業所の表彰をさせていただいた。グーテンベルグの活版印刷術は20世紀最大の発明と言われているが、私たちの先人はその技術を使い、生かし、育てて今を迎えている。旭川の協同組合は50年の歴史であるが、有珠善光寺での木版から始まった北海道の印刷は函館・札幌・根室・小樽を経て明治31年旭川の地で松井活版所の開業につながったと聞いている。 |
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| 今、印刷界はDTP、データベース、SGMLとその進歩・変革は驚くばかりであるが「職人技の美、仕事の後から追ってくる美」の世界は、初心さえ忘れなければ、これからも連綿と続くだろうと思われる。 |
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| コンピュータの普及は市民生活の中に印刷の文化が浸透していくことになり、誰もが印刷を生活の一部と考える日が近づいている。そのことは喜ぶべきことであるが、印刷専業の私たちがコンピュータを過信しないことも心したいことである。インターネット、Eメールは情報伝達手段であり、これからの印刷業界の発展と歩調を合わせるものであるが、コンピュータの応用はハッカーなどの意図的妨害や操作ミスなどによって取り返しの困難な失敗を招く可能性もある。臆病になっては文明の進歩は失速するが、センセーショナリズムに流されることなく、紙に印刷することの確実さを考えながら「用の美」の基本に立ってコンピュータ世界を共有していきたいものである。私たちが目指してきたのは文明ではなく文化そのものだからである。 |
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